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大きな円盤の下で

神戸ファッション美術館が開館して間もない頃、某新聞社の記者が飛び込みで取材に来て、対応する者があいにく誰もおらず、私が応対することになりました。
神戸ファッション美術館の紹介記事を建築の観点から書きたいということで、神戸ファッション美術館の建物に込められたコンセプトや意図、それができるまでの経緯について、随分長い時間をかけてお話させてもらいました。

一通りお話が終わったあと、その記者が「ここからはオフレコですが、実際のところご自身はこのような大きな円盤のついた建物をどう思われますか?」と訊かれて、「非常によく目立つ建物だし、美術館への道のりを説明するのにも目印になりやすい。その意味で、かに道楽のカニの看板みたいなところもあるかと思います」と答えてしまいました。不用意にも。
その後発行された新聞の記事には、時間をかけて細かに説明した話などなに一つとして載らず、ただ「かに道楽のカニのようだ」という言葉だけが私の発言として使われていました。その記事を見られた関係各所の方々からは、「言うに事欠いてカニとはなんだ!」とのご叱責や、「あーあ、やっちゃったねぇ」との憐憫のお言葉を頂戴しました。
それに懲りて、以後、取材の際には自らの発言には慎重に慎重を期するようになりました。とはいえ、それからも反省と後悔は幾度となくありましたが。

そんな目立つ大きな円盤を掲げた美術館も、来月で開館してから丸16年が経ちます。
16年の間には実にいろいろなことがありました。その間、山のような喜怒哀楽を重ね、数え切れないほどの「ありがとう」がありました。
弥生三月あと10日。円盤の下で過ごす私の日々も残りわずかとなり、四月からは外から円盤を眺め、円盤を目印にして足を運ぶ側になります。朝な夕なに見上げ続けてきた円盤が懐かしく思えるようになる日々は、もうすぐそこまで来ています。

MOMO

  • 2014/03/20 |
  • 19:27 |
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