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『セレブの肖像』のシンクロニシティ

早いもので、自らが担当して始まった『セレブの肖像 ケヴィン・ウエステンバーグの視線』展も会期半ばを過ぎて、余すところあと1ヶ月ちょっととなりました。この展覧会は今のところ国内の巡回先が決まっていないので、気になっていながらもまだご覧になられていない方は、お急ぎください。

この展覧会の企画を最初に持ちかけていただいたのは、神戸にお住いの大熊ジャケリーンさんという方でした。ジャケリーンさんはスイス出身の方です。旦那さんは日本人で、長らく日本に住んでらっしゃいます。彼女は、ケヴィン・ウエステンバーグさんのアジアにおけるエージェントをされていて、かねてより日本での展覧会を希望していた作家の意図を汲んで、神戸ファッション美術館に企画のオファーをされました。この際に、仲人の役割を果たしていただいたのは、私が長年一緒にお仕事をさせていただいている神戸カレッジ・オブ・ファッションの副理事長の辻村謙一さんです。

辻村先生に伴われて当館に現れたジャケリーンさんは、展示室の壁の色を見るなり「まさにここはケヴィンの写真を展示するのに相応しい場所ですね。なぜならこの壁に塗られた黄や赤や青ほど、彼の作品の色とマッチする色はないと思いますよ」と興奮気味に話されていました。ちなみに当美術館の特別展示のエリアの壁は、ジャケリーンさんが訪れる数年前から、ずっと今の赤・青・黄でした。
その後にいただいたケヴィンさんの資料や彼のホームページで作品達を見ても、それほどピンとはこなかったのですが、いざ展示の作業を始めて彼の作品を空間に配置していった時に、ジャケリーンさんの言葉が非常によくわかりました。リチャード・アシュクロフォードやエリカ・バドゥの写真が放つ黄。リアム・ギャラガーやコールドプレイらの写真が湛えた青。トム・ヨークやザ・ホワイト・ストライプスらの写真から溢れる赤。それらの色が展示エリアの壁の色と呼応して、不思議な雰囲気を醸し出しました。展示作業のために来日したケヴィンさんも「これはシンクロニシティだね」と感嘆していました。

この展覧会は、確かにさまざまなご縁が重なって開催に至りました。もともとジャケリーンさんと辻村さんとの出会いも、たまたま共通のお知り合いに招かれた席で居合わせたことがきっかけだったようです。そういう意味では、まさにシンクロニシティ(共時性)なのかもしれません。

そういえば、ケヴィンさんがこんなことを話されていました。「僕は、気になるアーティストがいれば、いつか会いたい、会ってその人の写真が撮りたいと強く考えるんだ。そうすると不思議なことにそういう機会が自然と訪れるんだよ」、と。そうやって出会った様々な人たちを一期一会の心境でカメラに収めていくんだそうです。

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