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直接は関係がないように想うものであっても・・・

新キーワード辞典(河野・秦・大貫訳、ミネルヴァ書房2011)によれば、「14世紀におけるfashion(ラテン語のfacereに由来)のひとつの意味は、「作る(make)」というものであり、それはある物体が何かでできているかという問題もふくんでいた―人間の顔は貧弱な気質によって形成される(fashioned)かもしれないし、強壮な身体は高貴な血統によって形成されるかもしれない。ファッションは個人の本質と起源をあきらかにするもの」であったが、20世紀初頭には「ファッションの定義とその社会学的重要性はしだいに議論の対象」となったとしています。
 この引用のみならず、時代と共にファッションが、個人的趣向の範疇ではなく、社会性を帯びてきたことは、これまでにもさまざまにひも解かれ、幾つもの切り口から述べられてきたところです。

 そんな生活環境としての“社会”をみたときの枠組みは、公共事業の対象となる道路や港湾といった物的な社会間接資本や公的な基盤的仕組みとしての法律や制度(ハード面)と、人々の信頼関係に基づくネットワークのようなもの(ソフト面)に分けられます。
先にあげた“ファッションの定義とその社会的重要性”について、後者のソフト面から少し考えてみたいと思います。
“人々の信頼関係に基づくネットワーク”(=「ソーシャル・キャピタル」)を論じる際、国内外を問わず1990年代以降、ハーバード大学のロバート・パットナム教授の定義が多く引用されてきました(柴内康文訳『孤独なボーリング―米国コミュニティの崩壊と再生』柏書房、2006年)。これによるとソーシャル・キャピタルは、「人々が共有する目的の追求に当たって、より有効な協調行動を可能にするような、ネットワーク、規範、信頼といった社会生活の特徴」と示唆しています。
このソーシャル・キャピタルを考えるうえで、人々は「市場」という制度だけで生きていくことができるだろうか。人々は「国家」という制度だけで生きていくことができるだろうか。という2つの問いを提示しています。
また、パットナムは、ソーシャル・キャピタルについて、集団内部の人々をまとめる内向的・接着型のネットワークと、異なる集団を横断的にまとめる外向的・架橋型ネットワークとに分けて述べています。これはソーシャル・キャピタルが持つ長所と短所の二面性を示しています。
ソーシャル・キャピタルのポイントは、顔見知り集団内での信頼が、見知らぬ人々の間の普遍的な信頼にまで広げられるかどうかにあり、信頼そのものが重要なのではなく、信頼の強さや範囲が重要としているところです。
しかしながら、人々にはそれぞれ、好みと嗜好の違いがあるため、互いのあいだでのやりとり(「取引」)は必然的に起こる。また世の中が不確実である限り、「信頼」は不可欠となる。ここで問題となるのは、組織を通じて「効率」や「正義」という価値理念を実現するためには、人々の間の友好的な関係が面識や付き合いや縁故の範囲を超えなければならないということが求められるということなのです。
ただこれらを現実のものとすることは、あまりに難しいことであると皆さんも容易に推察されるのではないでしょうか?
 実際、以上の点を踏まえこの数年、20世紀前半に活躍したフランスの人類学者マルセル・モースが研究していた“伝統社会の慣習の中に、近代の合理的な思考と異なる原理を見出す「贈与論」などの著作”が再評価され、あらためて研究されています。
 社会科学でも流行があって、廃りがあって、再評価があるんですよ。

 “ファッション”には、直接関係がないと思われがちな“社会学”や“人類学”も普段とは異なる切り口を見せてくれる、結構愉しいツールかも知れませんよ。

kiuri

  • 2011/08/04 |
  • 18:15 |
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