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栗野宏文氏 講演会

先日、神戸ファッションコンテストの一環として、ユナイテッドアローズのクリエイティブ・アドバイザー・栗野宏文氏をお迎えして、「ファッションの現在と未来:日本と世界のファッション・クリエイション」というタイトルでご講演していただきました。

会場には、今年の神戸ファッションコンテスト入選者18名をはじめ数多くの学生さん、ファッション系学校の先生方、そのほか一般の方々など多数お集まりいただき、皆さん熱心に耳を傾けておられました。

栗野氏は、終始、コンテスト入選者の方々に語りかけるように話され、その言葉はわかりやすく且つ深い示唆に富むものでした。私を含め会場にいた人たちは、時に考えさせられ、時に目から鱗がはがれるような面持ちで、栗野氏のお話に聴き入っていました。

栗野氏はご講演の冒頭で、「生活者にとってファッションはファーストプライオリティではない」とおっしゃいました。この言葉は、これからファッション業界を目指す人たちに向けて、とても大切な心構えを伝えています。

私たちは普段、それぞれの日常を暮しています。その暮らしの中で、気になることや気にしなければならないことは、各自が千差万別に山のように抱えて生きています。

そんな中で、ファッションは一番に優先すべきことではありえないという当たり前のことを、作り手は見失ってはいけないということです。

「自分が作りたい服をやみくもに作るのではなく、着る人の生活に思いを巡らせないと、本当に着る人の心を打つ服は作れない。だからこそ、日々を生活している人たちがどのような時代に暮しているのかを知らなければならない」と、栗野氏は話されました。

その氏の考えを表すものとして、かつてご自身がお作りになったファッション史年表が、会場の人たちに配られました。これは、ファッションの流れだけでなく、社会現象やマス・カルチャー、音楽、時代のキーワードなど多岐にわたる項目が網羅されたものです。栗野氏は、このような年表を各自が自分で作ってみることを薦められ、その行為の中から、様々なことが得られるとおっしゃいました。

その後も栗野氏からは刺激的なお話がたくさん出てきて、あっという間に60分が過ぎ、会場の学生さん達との質疑応答にも、とても真摯にお答えいただきました。

そのたくさんの興味深いお話の中から、私が特にハッと打たれたものを一つご紹介します。

コンテストの当日、ほとんどの入選者たちは、ウォーキング審査の際にモデルにハイヒールを履かせていました。そのことに私自身もなんら疑問に感じずにいたのですが、ご講演の中で栗野氏は、「なぜハイヒールなのか?」と問われたのです。ハイヒールは、確かに履く人の容姿をかっこよく見せるものですが、決して歩きやすいものでも健康に良いものでもありません。そのハイヒールをモデルに履かせて完成するという服のデザインは、逆に見ればハイヒールを履かないとシルエットは完成しないということになります。そのような、着用者にハイヒールを強いるようなデザイナーからの提案は、かえって受け手の幅を狭めてしまうことになってしまいます。ハイヒールを履くという西洋的な価値観は、知らないうちに私たちの中に刷り込まれ、それが服の可能性を小さくしているのです。

また、このお話は、先にご紹介した「着る人の生活に思いを巡らせる」ということにもつながっています。

と、ごくごく一部のお話をご紹介しましたが、この栗野氏のご講演の詳細については、後日冊子にして、当日会場に来られなかった方々にも、ぜひお伝えしたいと考えております。

 

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