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貴重書庫より  / S.M.S.; a direct mail from 1968

 
 
1968年に出版された“ S.M.S.” という作品集、をご紹介させて頂きます。
 
 
S.M.S.と言うのはSh** Must Stop の略語です。(放送禁止用語のあのSh**です。)

ライブラリーで好評いただいているVisionaire (ヴィジョネア)の原型ともいわれるように、10数点の様々な形態の作品がひとつのフォリオに収められており、ファッション美術館ライブラリーでは幸運にもVol. 1 から Vol.6 まで、計6つのフォリオが全てそろった状態で所蔵されています。

シュールリアリスト、William Copley のNYマンハッタンのロフトに分野を超えたアーティストが集まりだしたのは1960年代後半のこと。

そこでは、既に著名な作家から向上心に燃えるArtist-to-be まで、様々なジャンルのアーティストやその他もろもろの雑多な要素がCopley の提供する空間で出会い、融和と衝突を繰り替えしつつ制作活動を行いました。

今回ご紹介するS.M.S. は、そこに集まるアーティストからの作品提供を元にCopleyによって編集され、Letter Edged in Black Press 社から出版された作品集です。

彼らCopleyのロフトに集うアーティスト達の精神を体現し、アメリカンアートの全盛期ともいえる「時代」を詰め込んだまさにタイムカプセルのような作品集は、Copley の成し遂げた特筆すべき偉業だと評されています。

Copleyのロフトの光と影、紫煙、(アーティスト達のためにCopleyが用意した)デリカテッセンZabar’sのブッフェの匂い、喧騒と静寂、抱擁と攻撃・・・そういった、その時代その場所の全てのモノがフォリオを開いた途端作品と共に溢れ出し、そのままこちらの胸に流れ込んでくるような空気圧を感じさせる稀有な作品集。 しかし反対にフォリオの中の「全ての判断を鑑賞者にゆだねた」オブジェの数々を作品と認める事に疲れ、続けて購読する事を放棄してしまった人もいたようです。

とても分かります。その気持ち。このシリーズを閲覧して頂けるよう処理し始めた時の私がまさにその境地でした。ショックでした。ダカラコレハイッタイナンナノヤ、と。

でもこの、ダイレクトな「感動」こそがS.M.S. の意図したものだったようです。

彼らは美術館やギャラリーといった組織、さらにキュレーターや評論家の目や口を通すことなく芸術と鑑賞者を直接結ぶこと(ダイレクトラインの開設)を試みたのです。購入者には直接郵便で配達するという方法を採ったのもその為でした。

さらにアーティスト間の「カテゴリー」といった垣根を取り去る事もまたS.M.S.の目指すところでした。ですから、作品集に参加したアーティストの中にはマルセル・デュシャン、マン・レイ、クリスト、ヨーコ・オノ、リキテンシュタイン他様々な分野の名前を見る事ができます。

有名・無名のアーティストから提供された作品を正確にRe-プロデュースしたオブジェの数々はランダムに6部のフォリオに収められ、各アーティストにはその知名度や制作材料に関わらず一律100ドルが支払われました。

例えば、チンパンジーによるフリーペイントにも100ドルが支払われ多分全額バナナになりました。(確たる証拠もありませんが。)  《 S.M.S. No. 5 カバーデザイン 》

オノ・ヨーコ氏にも100ドルが支払われたようですが、ちなみにその作品はオレンジ色のサテンリボンに結ばれた接着剤のチューブと使用方法のインストラクションが箱に収められたものです。

インストラクションには

Take your favorite cup,                                         

Break it in many pieces with a hammer,              

Repair it with this glue                                         

And this poem in three stanzas dedicated to John

とあります。 《 Title : Mend Piece for John 》 《 S.M.S. No.5 ⑧ 》

また、服役中のアーティストが身の回りの紙片に密かに綴ったメモ書とドローイング。コレも100ドル。出所してからのお支払いでしょうか。

立案者Copley自身の作品は No.5 に一点収められています。

Copleyが(米)シカゴに寄贈したピカソの彫刻の所有権をめぐる争いそのものを作品としています。 ピカソの彫刻が市に贈られたという事はその彫刻はその時点でシカゴ市民のモノであり、彫刻のまん前にあるバーバーショップがその彫刻のイラストをビジネスカードに載せたことで罰金・使用差し止めを受けるのはちょっと違うんじゃないか?ということで、その使用許可をパブロ・ピカソに直接訴えた手紙がフォリオの中に収められています。 とてもストレートな文章です。 

芸術と鑑賞者の境界線を付き合わせ、発信者から鑑賞者へのダイレクトラインを建設しようとするS.M.S.の試みとまさにピッタリと重なり合うこの事件をCopleyは丸ごと作品として人々に届けたのでした。

もちろん問題となっているビジネスカードも添えられているところが、S.M.S. のさすがなところです。《 S.M.S. No.5 ③》

まだまだ紹介しきれない様々な作品やメッセージ、そして匂いと空気があります。

どうぞライブラリーで、コプレイの仕掛けたダイレクトラインを、体感して下さい。

請求番号 : K3499=SMS=1~6

閲覧にはライブラリーカードが必要です。身分証明書(住所・氏名・生年月日の確認できるもの)をお持ちのうえ、ライブラリー内カウンターでお申込下さい。(無料・3年間有効)

Teppici 

  • 2010/10/12 |
  • 11:28 |
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